高校の頃、大好きだった先生がいた。名前は高瀬先生。物理の先生で顔は冴えないし、頭は３０前にして若干薄いし、本当にパッとしない先生だった。
だけどバカばかりの僕のクラスで楽しく一生懸命教えてくれた。
三年ぶりにふと会いたくなり学校に会いに行ったら、今年辞めたとのことだった。
辞めた理由は学校の方針とのすれ違いらしい。もともと私立の学校だから進学率を上げてなんぼ。ダメなやつはとにかく推薦で押し込み、できるやつはムチ打って良い大学へ滑り込ませるって感じだった。
だけど高瀬先生は、大学なんて別に行きたくなければ行かなくて良いという考えで、生徒が考えた進路には真剣に向き合ってくれる人だった。
頑張れば褒めてくれるし、ダメなやつには静かにだが真剣に向き合ってくれる。
そして得意技は下手くそなボケ。知らんぷりして僕の前を通りかかり、先生！と声をかけると「お、どうした！」と、わざとらしく先生が言うのが僕も大好きだった。
離任式も出ずに生徒に何も言わずに辞めて行ったらしい。先生らしいっちゃ先生らしいなぁ。
もう母校の高校に行っても高瀬先生はいないけど、いまもあの第三職員室にいけば「なにやってんだよ成瀬(笑)」と先生のすっとぼけた声が聞こえてきそうな気がする。

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